コラム / 2026年11月1日
取引先ごとの採算の出し方|儲かっている取引先・儲かっていない取引先をExcelで分ける
「売上はあるのに、利益が残らない」。その原因は、会社全体の数字だけを見ていても分かりません。取引先ごとに分けてみると、売上は大きいのに、ほとんど儲かっていない相手が混ざっていることがよくあります。この記事では、取引先ごとの採算をExcelで出す手順をまとめます。
- 会社全体の粗利率は「平均」。取引先ごとに見ると、ばらつきが見える
- 売上の明細と原価があれば、Excelのピボットテーブルで出せる
- 売上の大きさ × 粗利率の4つに分けると、打ち手が決まる
会社全体の粗利率は「平均」にすぎない
次の表は、従業員20人・年商約3億円の架空の会社の例です。会社全体の粗利率は27.2%ですが、取引先ごとに見ると、17.9%から40.0%まで大きく違います。
| 取引先 | 売上(万円) | 粗利(万円) | 粗利率 |
|---|---|---|---|
| a社 | 7,800 | 1,400 | 17.9% |
| b社 | 5,200 | 1,820 | 35.0% |
| c社 | 3,600 | 900 | 25.0% |
| d社 | 2,400 | 960 | 40.0% |
| e社 | 1,500 | 270 | 18.0% |
| その他 | 9,700 | 2,850 | 29.4% |
| 合計 | 30,200 | 8,200 | 27.2% |
会社・数字はすべて架空の例です。
取引先ごとの粗利率(点線は会社全体の27.2%)
一番売上の大きいa社の粗利率が、一番低い。こういうことは珍しくありません。大口の取引先ほど値引きを求められやすく、長く続くうちに条件が見直されないままになりがちだからです。
用意するデータ
- 売上の明細:日付・取引先・商品(または案件)・金額。請求書や販売管理のソフトから出せることが多いです
- 原価:商品(または案件)ごとの仕入れ・外注・材料の金額。案件ごとに分からない場合は、商品ごとの原価率でもかまいません
- 期間:まずは直近1年分。季節で売れ方が変わる会社は、1年分で見るのがおすすめです
Excelでの手順
- 1明細を1つの表に
日付・取引先・商品・売上
- 2原価を付ける
商品ごとの原価を引いてくる
- 3取引先ごとに集計
ピボットテーブル
- 4粗利率を出す
粗利 ÷ 売上
- 54つに分ける
売上の大きさ × 粗利率
手順1〜2でできる表のイメージ
| 日付 | 取引先 | 商品 | 売上 | 原価 |
|---|---|---|---|---|
| 10/1 | a社 | 商品A | 120,000 | 98,000 |
| 10/1 | b社 | 商品C | 80,000 | 52,000 |
| 10/2 | d社 | 商品B | 45,000 | 27,000 |
1行に1件の売上。原価の列は、商品ごとの原価の表から引いてきます(数字は架空の例)。
取引先ごとの1年の売上と原価を入れるだけで、粗利率と4つの区分が自動で出ます。値上げの試算(会社全体)のシートも付いています。
入っている例は架空です。明細からの自動集計、商品ごとの採算、手間を加味した採算、取引先ごとの値上げの試算は入っていません。
1. 売上の明細を1つの表にまとめる
1行に1件の売上を並べ、「日付・取引先・商品・売上」の列を作ります。取引先の名前の書き方(「株式会社」の有無など)は、ここでそろえておきます。
2. 1行ごとに原価を付ける
「原価」の列を足し、商品ごとの原価(または 売上 × 原価率)を入れます。商品ごとの原価の表を別に作っておき、XLOOKUP(またはVLOOKUP)で引くと楽です。
3. 取引先ごとに集計する
表全体を選んで「挿入 → ピボットテーブル」を選び、行に「取引先」、値に「売上」と「原価」を入れます。SUMIFS関数で集計してもかまいません。
4. 粗利と粗利率を出す
粗利 = 売上 − 原価、粗利率 = 粗利 ÷ 売上 で計算し、粗利率の低い順に並べます。
5. 4つの区分に分ける
売上の大きさと、粗利率が会社の平均より高いか低いかで、取引先を4つに分けます(次の章)。
4つの区分と、それぞれの打ち手
例:d社
例:b社
例:e社
例:a社・c社
右下の「売上が大きいが、粗利率が低い」取引先は、少しの見直しでも金額が大きく動きます。上の例でa社の価格を3%見直せば、お客さんの数が変わらない場合、粗利は年約234万円増えます。値上げの効き目の計算は、値上げしたら客は何%減っても大丈夫?で詳しくまとめています。
もう一歩進めるなら:手間も加味する
粗利だけでは見えないコストもあります。たとえば次のようなものです。
- 小口の注文が多く、配送や事務の手間がかかる
- 値引きや返品が多い
- 支払いが遅く、お金が長く寝ている
手間をざっくり出して粗利から引くと、より実態に近い採算が見えます。最初から正確にする必要はなく、差が大きい取引先が分かれば十分です。
気をつけること
- 原価の付け方をそろえる:取引先ごとに付け方が違うと、比べられません
- 数字だけで取引をやめない:採算が低くても、ほかの注文の入口になっている、関係が長い、などの事情があります。数字は、話し合いの材料として使います
- 法律に関わる判断は専門家に:取引先との価格の交渉には、下請けの取引に関するルールなどが関わることがあります
まとめ
会社全体の粗利率は平均にすぎません。売上の明細と原価を1つの表にまとめ、取引先ごとに集計して、4つの区分に分ける。それだけで、どこから手を付ければ利益が残るかが見えてきます。
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