コラム / 2026年11月1日

値上げしたら客は何%減っても大丈夫?利益が変わらない計算と価格の見直し方

仕入れや人件費は上がったのに、「お客さんが離れるのが怖くて、値上げできない」。多くの社長が抱える悩みです。ただ、値上げで何%までお客さんが減っても利益が変わらないかは、計算で先に出せます。この記事では、その計算のしかたと、価格を見直すときの手順をまとめます。

この記事のポイント

コストの上がり分を価格に乗せられている会社は、半分ほど

中小企業庁の2025年9月の調査では、コストの上がり分のうち価格に転嫁できた割合は53.5%でした(創業手帳の記事より)。残りの半分ほどは、会社が利益を削ってかぶっていることになります。

値上げをためらう理由の多くは「お客さんが離れるかもしれない」という不安です。この不安は、数字にすると判断しやすくなります。

値上げで、利益はどれだけ増えるか

たとえば、売上1,000万円・粗利率30%の商品があるとします。原価は700万円、粗利は300万円です。

この商品を5%値上げし、売れる数が変わらなければ、売上は1,050万円、原価は700万円のままなので、粗利は350万円になります。

5%値上げした場合(売れる数は同じ)

値上げ前の粗利
300万円
値上げ後の粗利
350万円(+約17%)

売上1,000万円・粗利率30%の例。原価700万円は変わらないので、値上げの50万円がそのまま粗利に乗ります。

値上げは5%でも、粗利は約17%増えます。値上げの分は、ほぼそのまま利益になるからです。

お客さんが何%減っても大丈夫か

では、値上げでお客さん(売れる数)が減った場合、何%までなら粗利の額が今と変わらないでしょうか。計算は次のとおりです。

値上げ率例:5%÷(粗利率例:30%+値上げ率例:5%)=減っても大丈夫な上限約14.3%

粗利率30%で5%値上げなら、5 ÷(30 + 5)= 約14.3%。つまり、お客さんが14%減っても、粗利の額は今と同じです。減ったのが10%なら、値上げ前より粗利は増えます。

5%値上げ・粗利率30%の場合

  1. 1
    価格を5%上げる

    1つ売れるごとの粗利が、30から35に増える

  2. 2
    お客さんが14%減る

    売れる数は100から86に

  3. 3
    粗利の額は同じ

    35 × 86 ≒ 30 × 100

売上100あたりで考えた例です。

早見表

粗利率3%値上げ5%値上げ10%値上げ
20%13.0%まで20.0%まで33.3%まで
30%9.1%まで14.3%まで25.0%まで
40%7.0%まで11.1%まで20.0%まで

お客さん(売れる数)が、この割合まで減っても、粗利の額は値上げ前と変わりません。

5%値上げで、お客さんが減っても大丈夫な上限

粗利率20%
20.0%まで
粗利率30%
14.3%まで
粗利率40%
11.1%まで

粗利率が低いほど、減っても大丈夫な幅が大きくなります。粗利率20%の商品なら、5%の値上げでお客さんが2割減っても、粗利は変わりません。

計算してみる

入力した数字は、このページの中だけで計算し、どこにも送信されません。

逆に、値下げはどうか

同じ考え方で、値下げした場合に、お客さんが何%増えないと粗利が元に戻らないかも出せます。

値下げ率例:5%÷(粗利率例:30%−値下げ率例:5%)=必要なお客さんの増加20%
5%値上げすると
  • お客さんが14%減っても粗利の額は今と同じ
5%値下げすると
  • お客さんが20%増えて、やっと同じ増えなければ、粗利は約17%減る

どちらも粗利率30%の例です。

値下げは、思っている以上に利益を削ります。同じ5%でも、値上げと値下げでは、利益への効き方がまったく違います。

粗利率が低い取引先ほど、見直しの効き目が大きい

会社全体の粗利率は、いろいろな取引先・商品の平均です。中には、粗利率が平均よりずっと低い取引先が混ざっていることがよくあります。早見表のとおり、粗利率が低いほど値上げの効き目は大きいので、まず取引先・商品ごとの粗利率を出し、低いところから見直すのが効率的です。

取引先ごとの粗利の出し方は、取引先ごとの採算の出し方で詳しくまとめています。取引先の売上と原価を入れるだけで粗利率が出るExcelのひな形(簡易版・無料)もご用意しています。

価格を見直すときの5つの手順

  1. 1
    粗利率を出す

    取引先・商品ごとに。どこを見直すかを決める

  2. 2
    コストの上がり分を示す

    仕入れ・人件費・燃料が、いつから何%上がったか

  3. 3
    試算で幅を決める

    何%上げると、何%減っても大丈夫か

  4. 4
    説明の資料を作る

    上がったコストと、見直しの幅の根拠

  5. 5
    結果を毎月見る

    売れる数と粗利が実際にどう動いたか

※この記事の計算は、売れる数が減っても原価の単価は変わらない、という前提の目安です。取引先との価格の交渉には、下請けの取引に関するルールなどが関わることがあります。法律に関わる判断は、弁護士などの専門家にご確認ください。

まとめ

値上げで何%までお客さんが減っても大丈夫かは、「値上げ率 ÷(粗利率 + 値上げ率)」で出せます。粗利率が低いところほど効き目は大きく、値下げは思った以上に利益を削ります。まずは取引先・商品ごとの粗利率を出すところから始めましょう。

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